学校内・外の連携

学校外での連携学校外での連携

子どもへの支援を「担任教師だけで抱えない」ということだけでなく、「学校だけで抱えない」ということも重要です。
支援の行き詰まりを避け、よりよいサポートを求めるなら、学校外の専門家や専門機関との連携・協力は大切です。地域で活用できるリソースを把握し、積極的に相談して、支援を充実させていきましょう。

「専門家チーム」と「巡回相談」

発達障害のある子どもへの指導・支援の充実のために、専門性の高い専門家が学校からの求めに応じて指導・助言をする制度として「巡回相談」があります。自治体によって、その活用方法や拠点組織に違いはありますが、主に次のような組織があります。

「専門家チーム」…教育委員会の職員、医学・心理学・教育の専門家(医師や心理学の専門家など)を中心に構成されます。ADHD、LD/SLD、ASDなどの特性に応じて、子どもへの対応について専門的な意見をアドバイスしたりするといった役割を担います(「LD/SLD、ASD」の詳細はコチラ)。

「巡回相談員」…各自治体に所属する発達障害や特別支援教育などに関する知識を持った相談員が、地域内の児童がいる教育施設を定期的に巡回し、教師などへ障害のある児童に対する指導内容・方法に関する助言を行います。専門家チームと学校の間をつなぐ役割も担います。

相談の依頼方法は、それぞれの自治体や機関によって異なるので、学校長を通じて教育委員会などに確認しましょう。

センター的機能を果たす「特別支援学校」

2007年から本格的に特別支援教育がスタートした際、以前の盲学校・聾(ろう)学校・養護学校の区別をなくして、さまざまな障害に対応することも可能な学校として「特別支援学校」が設置されました。知的障害教育を行う特別支援学校では、知的な遅れがあり、日々の学校生活で多くの支援が必要となる子どもが通います。
それぞれの障害に対する高い専門性を有する学校が、その専門性を生かして、地域において貢献することが求められており、特別支援学校には次のような役割が期待されています。

地域の幼・小・中・高等学校の教師が発達障害のある子どもへの指導に迷ったときに、相談に応じる。

地域の教師や保護者を対象にした研修会を企画し、特別支援教育への理解を深める。

特別支援学校は、普段から近隣の学校との交流や共同学習なども積極的に行っているため、そのような機会に教師同士顔見知りとなり、つながりをつくっておくとよいでしょう。支援の要請にあたっては、「巡回相談」(「巡回相談」の詳細はコチラ)という形での対応を依頼したり、学校長を通じて相談依頼をしてください。

地域のさまざまな専門家・専門機関との連携

何か大きなトラブルが起きたり、支援が行き詰まったりしてから、初めて学校外の機関に助けを求めるのではなく、普段から地域のどこにどのような専門家がいるか、あるいは専門機関があるかを把握しておくなど、つながりを持っておきましょう。また、発達障害のある子どもやその保護者が生活上で困ったことを相談する機関などを把握しておきましょう。「このようなところに相談してみては?」と、保護者に相談先の提案もできるとよいでしょう。
親子を取り巻くいろいろな立場の人たちが子どもを多面的に見て、その情報を集約し、検討することが、よりよい支援につながっていくでしょう。「こんなときは、この人!」「この問題は、この人が得意」など、連携の引き出しを増やしていきましょう。協力関係を築いていきたい連携先として、次に紹介する施設や機関が挙げられます。なお、各機関・施設の名称は地域によって異なる場合があります。ご注意ください。

発達障害者支援センター

発達障害者への支援を総合的に行うことを目的とした専門機関で、各都道府県に1ヵ所以上設置されています。都道府県・指定都市や、知事などが指定した社会福祉法人、特定非営利活動法人等が運営しています。保険、医療、福祉、教育などの関係機関と連携し、地域における総合的な支援ネットワークを構成しながら、発達障害者とその家族の相談に応じ、指導と助言を行っています。

児童(子ども)発達支援センター
児童発達支援事業所

児童(子ども)発達支援センターは、家族や、障害のある児童を預かる施設などからの相談に対して、助言や対応などを担う、地域の中核的な施設です。障害がある児童が、通所により、日常生活における基本的動作、自活に必要な知識や技能の指導や、集団生活への適応方法などを身につけられるよう訓練を受けられます。
児童発達支援事業所は各地域に設置され、児童(子ども)発達支援センターよりも、身近な療育の場としての役割を担っています。

児童(子ども)家庭支援センター

児童相談所などの関係機関と連携し、地域に密着した支援を行う児童福祉施設です。児童に関する家庭やその他からの相談のうち、専門的な知識や技術を必要とするものに応じ、主に児童相談所から依頼を受け、児童やその家族への指導、その他の援助を総合的に行います。

上記の相談機関のほかにも以下のような連携先があります。

保育所・幼稚園

乳幼児期の子どもの様子や、保育所や幼稚園でどのような配慮を行ってきたかといった情報は、小学校での対応の重要なヒントとなります。就学時の申し送りの書類などを参考にし、必要なときは直接担任だった保育士・教諭と話をするなど、小学校入学後も一緒に見守れるような関係を築いておくとよいでしょう。

医療機関・療育機関

すでに地域の医療機関で診療を受けている場合は、専門的な見立てや、子どもが受けている療育プログラムの内容などが、指導の参考になることがあるため、保護者に断りを入れ、了承を得た上で、連携を図りましょう。各々の支援を共有し、調整できる関係を目指すことが大切です。可能であれば、子どもが通う医療機関・療育機関の担当者とコンタクトをとり、実際に支援の様子を知ることで、学校での具体的な関わり方のヒントが得られるでしょう。

保健所・保健センター

乳幼児期の健康診査を行っており、発達に関する相談や保護者の育児の悩みにも対応しています。この健康診査がきっかけとなって、早くから障害が明らかになる場合も多いようです。

児童相談所

子どもや家庭に関する相談援助活動を総合的に企画・実施する機関として各都道府県に設置されています。子どもと家庭、その他からの相談に応じ、専門的かつ技術的な援助を行っています。必要に応じて子どもを家庭から一時的に保護する機能、児童福祉司などが子どもや保護者に指導を行い、福祉施設などへ入所させる措置機能を持っています。また、児童家庭相談の対応について、市区町村の家庭児童相談室などと連絡調整を図りつつ、情報の提供や相談援助を行っています。

家庭児童相談室

子どもの福祉に関する相談や指導の充実を図るため、市区町村の福祉事務所に設置されています。不登校、非行、発達の遅れなど、子どもの問題に対する相談に応じ、支援を行っています。虐待の防止や早期発見に積極的に取り組みつつ、きめ細かな相談対応を行っています。児童相談所との違いは、立ち入り調査などの強制力のある権限を有していない点です。育児に関する重大な問題や虐待が疑われる場合などには、児童相談所と連携して支援します。

教育相談機関(教育センター・教育研究所、教育相談所・相談室)

教育相談や教育研修、専門的研究などを行っています。自治体によって異なりますが、臨床心理士や社会福祉士、教職経験者などが面談や電話で対応します。

親の会

障害のある子どもの保護者同士が、子どもが地域で生き生きと生活できることを目的として、活動しています。地域によって異なりますが、おもな活動として保護者に対しては、交流会、勉強会、情報交換会、相談会、子どもに対しては、レクリエーション、遊びサークル、学習会などを企画しています。専門家と連携して、療育的なことを行っていたり、地域に向けた講習会を企画したりもしています。一人で悩んでいる保護者にとって、同じ悩みを持つ保護者同士でつながることができる心強い存在となることが多いようです。ホームページを持っている団体もありますので、検索するのもよいでしょう。

監修:筑波大学人間系障害科学域 知的・発達・行動障害学分野 教授 柘植 雅義 先生

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